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「スマートフォンアプリマーケティング 現場の教科書」を解説したり書ききれなかったことをブログで書いてみるシリーズ第3弾。プロトタイプについて。
プロトタイピングの章の細かい手法については、共著者の荻野さんに譲るとして、発注者視点でのプロトタイプの意義について。
初期プロトタイプは実現したい人(発注者)が作るとメリットだらけ
アプリ開発においては、もはやプロトタイプはなくてはならないほどに浸透したと思ってるんだけど、まだまだ制作サイド以外には認知が薄いと思うので、今日はそのメリットについて書こうと思います。
ちなみに、プロトタイピングと言っても最初は紙に各画面の四角を書いて、線を引っ張るだけのペーパープロトタイピングがおすすめです。
プロトタイプを作るとモヤッとしたアイデアがクリアになる
「なんかfacebookみたいに簡単に仲間とコミュニケーションできたら良いのに」と思いついたとします。そこで紙に必要な画面を書いてみると、以下の様な考えに至ります。
- えっと、まず、自分の友だちを招待できて
- そのメンバーで画像とか動画とか投稿したり
- ファイル共有したり、そこにいいねできたりして
このようなことを考えながら紙に起こしていくと、なんとなくイメージが湧いてきます。facebookの画面と見比べながら、「既読数っていらないよな・・」とか「仲間内だから他人の画像とかに書き込みたい」とか、実際の画面イメージを考えながら、紙を書いては捨てながら本当に自分がほしい物を思い浮かべることが出来るようになります。
(書籍より。ここまでキレイにかけなくても、最初は書きなぐってOK)
または、「いろいろ考えた結果、やっぱfacebookでいいや」と思い至ることもまた重要な事です。頭のなかだけで考えていると、ふわっとしたイメージが、紙に書きながら考えるだけでなんともリアルに浮かび上がってくるのがプロトタイプの効果です。
プロトタイプで早く安く開発委託できる
今日一番言いたいのはこっちです。プロトタイプを書くことで、ヘタすると100万円以上見積もりが安くなります。だいたい制作会社をやっていて、危険な顧客のパターンは以下のとおりです。
- とにかく期限が短い(時間や契約の管理が雑なリスク)
- 全てに上役の承認が必要(担当者がOKでもあとで反故にされるリスク)
- とりあえず思いついたアイデアを投げてくる(軸が定まってない)
他にもありますが、1はほんとうに危険なので製作者の皆さんは逃げましょうとしか言えないのですが、2,3は、発注前の相談時点から完成までの間に変更がある(=余分な時間と作業が発生する)リスクがあるため、制作会社も見積もりにバッファを載せて対応します。だいたいこんな感じです。
どちらも開発費が300万円だとしても、社内でプロトタイピングまで済んでいると、劇的な変更はかからないだろうと安心できるので、オレンジの「事前に聞いていた要件と違った場合の保険」を低く抑えられます。
さらに、そのプロトタイピングを上長も承認している場合は、グレーの「リリース直前で偉い人がちゃぶ台返しする保険」も低く抑えることができ、結果的に納期の予測も正確になり(3ヶ月vs3ヶ月+バッファ2ヶ月)その分工程管理費も低減されます。
これで、発注側は30%ほどの安値で発注することができ、かつ受注側も健康的な制作環境が整うため、おたがいの余剰リソースを、アプリをより良くするために割くことができるようになるのです。
また、事前にプロトタイピングを用意しておくと、発注先業者のスキルを見極めるのにも有効です。どこにどの程度掛かりそうという「ヨミ」の鋭さはその業者の実力と言っても過言ではありませんし、素人である発注者が作ったプロトタイプを見て、足りない部分やイケてない部分を提案できる会社とご一緒できると良いと思います。
ちなみに内製開発の場合は?
そろそろプロトタイプ無しでアプリ開発をしている組織はないと思うので、もしそのような場合は、パソコンを即刻閉じて紙に書くようにしましょう。デザイナーさんがいる場合は、Sketch→Prottという流れが比較的ラクにできますので、ディレクターが簡単なワイヤーフレームを書いたら、デザイナーさんに依頼して作ってもらい、社内レビューすると良いでしょう。あとでZeplinにも書き出せるし!