クラウドワークスIPOとのこと、おめでとうございます。赤字上場や売上もまだ小さいことからNewsPicksなんかでは微妙な感じでしたが、次の攻めを期待しております。
クラウドソーシングに対する勘所
前提:アンケートとかじゃない方
まずはじめに本記事で話題にするのは、デザインやプログラミングなど、スキルがある方に依頼する方です。「簡単なアンケート!1件100円」とかAmazon mechanical turkみたいなのではなく、「時給2000円でJava開発業務〜」みたいな方です。
まずはじめに、私はもともと技術者でしたので、技術者界隈では「こんなダンピングの値段が横行したら市場が壊れるからムカつく」という意見をたまに見かけます。まずはこの点について思ったことを書いてみたいと思います。
発注者のスキルが低いことを理解しているか
業界外の方でご存じない人もいるかもしれないのでこの図を貼っつけときます。
この図から学ぶことは、IT業界にろくないない奴がいない。ということではありません(笑)
しかし、なぜ業者の見積もりは遊園地建設のような金額で、クラウドソーシングに頼むとその10分の1になるのでしょうか。
もちろん地方だから生活コストがやすいとかもあると思いますが、一人の人間が生きていく最低コストというのは日本国内においては10倍も変わることはないでしょう。
ポイントとしては、発注者がどこまで負担することを許容できるか。です。
某社でクラウドワークスを使うときに体験したこと
ぼかしてますがお察しください。業務で依頼するとなると、管理画面で一人ひとりとやりとりするとか面倒なんですよね。「ちょっと仕事の相談したいから今から来て」と呼び出し、「いい感じでよろしく」と頼みたいわけです。(もちろん過去の信頼関係がお互いある前提ですが)
仕事の出来上がりに関しても、こちらが何も言わなくても90点くらいまで一発で出してほしいわけです。いくら修正無料でも、50点をチャットでアドバイスしながら90点に一緒に上げていくのは嫌なわけです。
つまり、クラウドソーシングが向いているのは、発注側がある程度コミュニケーションに対してコストを掛けられる場合。だと思います。逆にいうと「わざわざ出向いてヒアリングに来てくれる」ことに対して普段余分にコストを払っているわけで、そのコストが含まれた価格が普通と考えるか無駄が多いと考えるかの価値観の違いです。
PLも営業も運用チームもサポートチームもいない。プログラマの有給休暇も税金の処理を行うバックオフィスも、契約書を作成する法務もいない。どの程度の成果物が出てくるのかも細かいニュアンスまでは見えづらい。プロジェクト途中に逃げ出して完了しないリスクも有る。それがクラウドソーシングの価格の安さ。
どちらにせよ大きな仕事を頼むには色々不安があるけど、発注側の工数を捻出できて、リスクテイクできるなら安く済む。そんなマーケット(が中心)だと理解しています。もちろんシステム面でそれらをある程度カバーしていますし。
なぜそう感じたかというと、実はクラウドワークスには法人向けのオプションとして、代行サービス的なのがあります。詳しく説明を受けたことはないのですが
- 大量のお仕事応募者の中からいい感じの人を選定してくれて
- 各メンバーとの細かいコミュニケーションを代行してくれて
- 全体の進行管理や各メンバーとの進捗管理を代行してくれて
- 各メンバーからの成果物の質をある程度取りまとめてくれて
という楽ちんなサービスです。が
これを使うと他の会社に発注するのと大してお値段が変わらなくなる。
規模にもよりますがこのディレクション料がぜんぜんクラウドソーシング価格じゃないので、さくっと高くなってしまいます。もちろんフレキシブルにいろんな仕事を安心して依頼できるというメリットは残りますが。
つまり、作業費以外のバリューが何かという話
図にすると例としてはこんなかんじで、作業費以外に「楽ちん費」「安心費」というのを既存の業者は提供しているわけで、作業費単体で比較して「価格が10分の1なんてダンピングだ!」と騒ぐのはナンセンスなわけです。顧客は作業にお金を払いたいわけではなく、価値に対して払いたいわけです。
実際の課金体系が作業費だったとしても、意向としては目的を楽に達成する手段を買っているわけなので。
なので、企業としてこれらプロフェッショナルサービスを提供しているところは(私もクライアント向けのサイトリニューアルとか最近やってます)名目上は作業費なんだけど、提供しているのは経営コンサルティング。みたいなのでも競争力になるわけです。
(余談ですが、コンサル会社でもないWeb系の会社に対して、コンサルティングという名目でお金払ってくれる企業って少ないですよね―。)
なので、クラウドワークスに懐疑的な技術者は、一度発注側に回ってみるといいと思います。顧客が100万円の予算で、ゆるふわな条件を投げてきたら、対面でヒアリングしてあげ、豊富な例示をもとに「顧客が本当に必要だったもの」を見つけてあげ、制作は10万円でCWに投げてみると良いと思います。
あなたが受け取る90万円のうち、利益が40万として、のこりの40万円は、「要件定義費」「交通費」「概要設計費」「進行管理費」「思った質に満たない作業者にあたってもブラッシュアップは俺がやります保険料」「作業者が途中で投げ出しても俺が最後までやります保険料」などなどになります。
逆にクラウドソーシング市場でも、このへんの「スキルもコミュニケーションも抜群で発注が楽ちんな人」は常に仕事が舞い込むので単価がどんどん上がってきています。
じゃあ海外はどうなのか。oDeskを使った話
実は持ち出しでちょっとプログラムを発注しようと思い、CWとoDeskの両方に出してみたところ、CWが5万〜、oDeskが$100〜となりました。やはり物価の壁は厚い。インド人に$130で発注しましたが、英語が苦手な分、こまかい指摘をうまく出せず、完成度が理想の8割くらいでした。やはり発注側の「正確にやりたいことを言語化するスキル」が重要な事がわかります。
まとめ
- クラウドソーシングが安く見えるのは、おおむね作業料のみだから。その分発注側の管理コストが発生する。
- 管理コストが掛からない楽ちんかつスキルのある技術者は、クラウドソーシングだろうと需給バランスに基づき高くなる。
- oDeskのほうが安いし、よく出来てる。たとえばoDeskの専任サポート担当者と電話ミーティングの予約を取りましょうとメールで促してくれたり、評価入力も「公開用」と本当のところどうだった?という「非公開用」があったりする。
- がしかし、前述の発注側のスキルがないと、安かろう悪かろうに陥る。つまり、お金があるならoDeskより日本語でやりとりできるCWが安心だし、更にお金があれば既存の業者さんに電話一本ではなしを聞きに来てもらうのが幸せ。