ku-sukeのブログ

Just another hatena blog

専門領域のプロと換金能力のプロは違う

セミプロに駆逐されるプロという構図 - Nothing ventured, nothing gained. を読んで。

アマチュア並の能力しかないプロが淘汰されるのは構わないが、質の高いプロが食えなくなり、その市場から撤退するのは残念だ。

僕はその答えは、流通側がんばれよ。という一言に尽きると思ってます。それを以下書いて行きたいと思います。

  • 専門領域の能力の高さと、換金能力の高さは別の話
  • 芸術領域での実例
  • 本人が頑張るか、流通が頑張るか

の3本です。

専門領域の能力の高さと、換金能力の高さは別の話

質の高いプロというのは、例えば上記記事で紹介されているような専門知識もありライティング能力も高く、以前はそれだけで十分食べていけたであろうライターさんであったり、超精密な日本の町工場の歯車を作る人であったり、すごくスマートで無駄のないパフォーマンス高いコードを書くプログラマーだったり、

つまり、金銭的価値はおいといて、その分野で高い能力を持った人(会社)のことだと思うんですよね。

ただ、その能力の高さと、人々が対価(わかりやすく換金と書きましたが、賞賛の声などでも可)を払いくなる度合いは多少の因果関係はあるにせよイコールではないということです。

人々に対価を払いたいと思わせる能力は、専門能力の高さとは別なのに、混同しているひとが大多数なのではないかと思っています。一例を上げると、高い技術力で画素数を上げれば売れると思ってる液晶テレビメーカーとか。

芸術領域での実例

少し極端な例かもしれませんが、わかりやすいサンプルが身近にあるので芸術(クラシック音楽)で例をあげてみます。

ぼくの妻は声楽家ですが、いまは歌っていません。巷の売れないバンドマンと同じで、歌うことでお金を得るどころか、コンサートをやろうと思えばチケットノルマをこなすために場合によってはお金を払わないといけないからです。

彼女はプロでしょうか。高校、大学と専門家による教育を受けて、それなりに良い成果をだして卒業しました。しかしそれを生業にするどころか親の援助がなくなったら歌を続けることができませんでした。

一時期彼女は失望していました。人生の多くをかけてあんなに頑張っても、(金銭面で)生活の役に立たないと。そこで僕は上記のような話をしたのです。慰めにはなりませんが、換金能力のほうを高めればいいんじゃない?と。(じゃあどうすればいいの?という部分では明確な答えを持ち合わせていなかったのでその時はそれで終わりました。)

そこでいま村上 隆さんの「創造力なき日本」という本とかを読んでその答えを見つけようかななんて思っています。

創造力なき日本    アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」 (角川oneテーマ21)創造力なき日本 アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」 (角川oneテーマ21)
村上 隆

角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-10-10
売り上げランキング : 1283

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

本人が頑張るか、流通が頑張るか

それでは、換金能力とは具体的にはなんでしょうか。ものすごく簡略化して言えば、

  • 認知させること=お客さんの前にこういうコンテンツがありますよと差し出すこと。
  • 対価を払いたいと思わせること

ではないでしょうか。前者のことをマーケティング、後者のことを営業なんていいますかね。

話を戻しまして、

有料の優良なコンテンツが駆逐されないためにはどうしたら良いのだろう。

優良なコンテンツホルダーに、適切な換金能力者(あるいは仕組み)をマッチングしてあげれば良いと思うんですよね。

今ある仕組みで言うと、作家と出版社の関係を想像してもらうとわかりやすいんですが、作家さんがたとえば電車の中吊り広告を発注して自分の新刊の宣伝をすることってないと思うんです。プロとして認められる作家さんの優良なコンテンツを換金能力をもっている出版社が、広告を打ったり、初回多めに刷ることでたくさんの店頭に並んで認知されるようにしたりと頑張っています。

いま、ニコニコ動画とか、メルマガスタンドもそうですが、インターネットによって低コストでたくさんの人に認知させることができるようになりました。何百万円も広告を打たなくても、そこそこのコンテンツをダンピングして売ることで、「ランキング」や「注目のコンテンツ」など「無料の広告枠」のようなものを得ることができます。

つまり個人やセミプロが、インターネットやプラットフォームによって換金能力を高める武器が増えた世の中といえるでしょう。

では、質の高いプロが、その質の高さに比例した換金能力を得る武器があるでしょうか。僕はまだ少ないと思っています。

例えですが、プラットフォームをショッピングセンターのフードコート、セミプロを牛丼、プロをステーキ屋さんとすると、、

ショッピングモールのフードコートのような「体験」が提供された場で、300円の牛丼と一皿2万円のステーキ屋さんを戦わせたらそりゃ牛丼が勝つでしょう。とはいえ、ショッピングモールの建設のような投資をステーキ屋さんに求めるのも、難しいなと。極稀にできちゃう人もいるかもしれないけど残りの大半は淘汰されますよそりゃ。

300円のコンテンツ価値を1万人に伝えるプラットフォームは多くありますが、1万円のコンテンツ価値を300人に伝えるようなプラットフォーム、そういうのが増えるとプロの人達が食べていけるんじゃないかなーと思うのです。

なので、専門領域の高い能力を持った個人が換金能力もあわせて高めるのもいいのですが、そうじゃなくってプラットフォームなり、パートナーなりが分業できればいいと思うんですよね。

※追記1:普段書かないジャンルの話を書いたら意外に反響を頂いて恐縮してます。このページ下部のブクマ、コメント、Twitterの皆さんの意見もあわせてご覧いただければと思います。

※追記2:おまえはどっち側の人間なんだって言われると、もともとプログラマとかなので作り手側なんですが、ここ数年は売ることを意識して企画・マーケットよりの仕事をいくつか取り組んでいます。そういう中で昨年(2011)iPhoneアプリのエンジニア向けマーケティング本を書いたりもしました。作り手としての能力があまり高くなかったので売る能力を伸ばしてみたらそこそこうまく生きていけてるように思います。本買ってくださいw